彼はね、新しい世界で、少し戸惑っていました。 周りの世界は、滞りなく進んでいくのに、 自分の心だけが、停まったままのような。 そこだけ音がしないような。 そんな感覚で過ごしているようです。 それは、初めてのことではなく 今までにも、何度も感じている、こんな感覚。 それは、前とはまた違うのだけど、どこか真ん中のところが同じ。 そして、それは、ずっと終わらないんじゃないかという気持ちになっていく。 このまま、自分は、音のないような、停まった世界に留まるような。 さぁ、そんなときは。 彼にいくつかの質問をしました。 焦らず、ゆっくりと答えられるように。 ひとつずつ。 ひとつずつ。。。 頭を下げて下を向いていた彼。 答えるために、自分の問いかけ、自分を発見していきます。 少しずつ、顔が上がり、 そして、上の方を向いて考える。 少しずつね。 それから、振り返ると… 今の彼は、前と真ん中は、同じだけど、明らかに前よりも心が軽い。ということを発見しました。 そして、前よりも、人との間に、交流があることも発見したのです。 そう、彼のプロセスは、ちゃんと進んでいたのです。 目立たないように。 邪魔になって、邪魔されないようにって気をつけて、隠していたけれど、 やっぱり、彼の言葉で、彼のことを語れる人になりたい。って思ったようなのです。 彼の心で、ちゃんと育っていた種。 社会人という芽。 これから、どんな風に伸びていくのかな。